忠「先頃は度々《たび/\》お心遣いを頂戴致して相済まぬことで、あゝ首尾|好《よ》く行《ゆ》こうとは心得ません、お村さんは御舎弟さまの御新造さまとお取極《とりきま》りになったのでございますか」
 蟠「何処《どこ》からも臀《しり》も宮《みや》も来ず、友之助は三百両持って取りに来ようという気遣いもない、先《ま》ず私《わし》も一と安心した」
 忠「御舎弟様の奥様が極って、お兄《あにい》様の奥様は何か極《きま》ったものはありませんか」
 蟠「どうも小意気なものは剣術|遣《つか》いの女房になる者はない」
 忠「昨年の暮浪人者の娘を掛合に往《い》った処が、御門弟を辱《はじ》しめて帰したことがございましたが、彼《あ》の儘でございますか」
 蟠「あれは彼《あ》の儘だ」
 忠「御門弟の方に聞きました処が、脇から妙な者が出て来て、先生のことを馬鹿士《ばかざむらい》とか申したと云って御門弟が残念がって居りました」
 蟠「丁度|好《よ》い幸いだ、貴公が来たのは妙だ、貴公の姿《なり》の拵えなら至極妙だ、少し折入《おりい》って頼みたいことがある、今に秋田穗庵が来るから穗庵から細かいことを聞いて、彼《あ》の浪人
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