の方へいらっしゃいまし」
母「おや/\あれは悪党かえ」
森「申し、お母さんは知らないのだがね、彼奴は悪党で、私《わっち》が何か云うといやにせゝら笑やアがるから、小癪《こしゃく》にさわるから擲《なぐ》り付けようと思いましたがね、今こゝで彼奴を打《ぶ》つとウーンと云って顛倒《ひっくりけ》えって仕舞うから、私《わっち》も堪《こら》えていたのです。お母さん心配しないで此方《こっち》へおいでなさい」
と隠居所の方へ連れて往《ゆ》きまして、
森「もし旦那え彼奴《あいつ》を打擲《ぶんなぐ》ると顛倒《ひっくり》かえるから、そうすると金高《きんだか》が上《のぼ》りますよ」
文「宜しい/\」
と云って脇差《わきざし》を左の手へ提げて座敷へ入って参りまして、
文「初めてお目に懸ります、私《わし》は浪島文治郎と云う者です、只今母から聞きましたが、昨夜お前の御家内を打擲した処、今日其の御家内を連れて来て、此方《こっち》で看病をしてくれろとのお頼み、又母が連れ帰ってくだされば金子《きんす》は何程《なにほど》でも差上げると云うと、お前は親分や友達に済まんと云えば、いつまでもお話は押付《おっつ》かんが、
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