つりか》えの印形を捺《お》したではないか、えゝ、それ故蟠作がもう妾に致した心得で毎晩抱いて寝ますよ」
 友「怪《け》しからぬ乱暴なことを云って、御冗談を仰しゃるが、手前|跡月《あとげつ》三十日《みそか》に少々金子に差支《さしつかえ》があると申したら、何時《いつ》でも宜《よ》いと仰しゃるから宜いと心得て居りましたが、そう云うことなら返金致すので、人の女房をそんなどうもお愚弄《からか》いなすっちゃアいけません、驚きますよ」
 蟠「何を云う、なんぼ兄弟の中でも金銭は他人と云う喩《たと》え通りだ、なぜ金を返さぬ、貴様は正直な商人《あきんど》だからよもや倒しゃせまいと思い、催促しなければ好《よ》い気になってこれまで返金に及ばぬから此方《こっち》で弟《おとゝ》が抱いて寝るは当然ではないか」
 友「先生それは貴方《あなた》本当に仰しゃるのですか」
 蟠「武士たる者が嘘を云うか」
 友「これは呆れた、呆れましたねえ、先生、貴方は立派な門弟|衆《しゅ》も沢山ある大先生のお身の上で、何《なん》と弱い町人を貴方|瞞《ごまか》す様なことをなさらんでも宜しいじゃございませんか、彼《あ》の時は真《ほん》の酒の場で
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