に、お出入を拵《こしら》えるには及びますまい」
 士「そこに少し訳ありさ」
 阿「訳ありとは」
 士「彼処《あすこ》で茶を酌《く》んで出した婦人を見たかえ」
 阿「いゝえ見ませんよ、婦人には少しも気が付きませんでしたが、あの袋物屋に種々《いろ/\》見て居りました中《うち》に、家内が茶を酌んで出した様でしたな」
 士「予《かね》て貴公に話した柳橋の芸者のお村の為には、手前は兄にも叱られる程散財して、手に入れようと思ったが、袋物屋に色男があって其の者の方へ縁付いたと聞いたが、先刻《さっき》茶を酌んで出したのは柳橋のお村だよ」
 阿「えーあれが、左様ですか、残念のことを致しました、手前見たいと思っていたが柳橋へお浮《うか》れの折には生憎《あいにく》お伴《とも》致しませんで、其の美人を拝見致しませんが、見たかった、残念なことをした、女房と思って気が付かんで居りました、あゝ見たかった」
 士「往来で大きな声をしてはいかぬよ、まア道々話しながら」
 と連《つれ》の阿部と云う男と話しながら帰りました。友之助は左様なことゝは存じません、翌々日は整然《ちゃん》と結構な品物ばかり取揃《とりそろ》えて風呂敷
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