たお村は袋物屋の女房には婀娜《あだ》過ぎるが、達摩返しに金の簪《かんざし》、南部の藍《あい》の子持縞《こもちじま》に唐繻子《とうじゅす》に翁格子《おきなごうし》を腹合せにした帯をしめ、小さな茶盆の上へ上方焼《かみがたやき》の茶碗を二つ載せ、真鍮《しんちゅう》象眼《ぞうがん》の茶托《ちゃたく》がありまして、鳥渡《ちょっと》しまった銀瓶《ぎんびん》と七兵衞《しちべえ》の急須《きゅうす》を載せて、
 むら「お茶を召し上れ」
 士「はい」
 と彼《か》の士《さむらい》は茶碗を取りながらお村の顔を見て、顔を少し横にそむける。阿部は酔っているから心付きません。
 阿「いよ、これはどうも有り難いが、願わくは手前は大きいもので水を一杯戴きたいもので」
 士「御亭主」
 友「へい/\」
 士「貴公は本所辺で出入の処がありはせんか」
 友「へい二三軒様お出入があります」
 士「本所の宅へ来て貰いたいのだが何《ど》うだね、多分の物は買わぬが、序《ついで》に来て貰いたい」
 友「へい/\、どういたしまして新店《しんみせ》のことで、何方様《どちらさま》へでも参ります、何《ど》う云う物が御入用様でげすか、えー宅に
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