て打ち打擲致し、割下水の中へ打込《ぶちこ》んで、踏んだり蹴たりします。彼《か》の町人は口惜《くや》しいから、
町「殺せ、さア殺して仕舞えあゝ口惜しい」
と泣声も絶え/″\になりましたが、遠くに立って居ります者も、相手が侍で屋敷の前でございますから、逡巡《あとずさ》りをして唯騒いでいるのみでございます。
「何《なん》でございます」
「何ですか分りませんが、向うは大伴《おおとも》蟠龍軒《ばんりゅうけん》と云う剣客者だそうでございます、其の内弟子が町人体《ちょうにんてい》の者を捕まえて打ち打擲しますが、余程悪いことをしたのでしょう」
「もし彼《あれ》は何《なん》でございます」
「泥坊で縁の下に隠れていたのだそうです」
「縁の下から刀と槍《やり》が出たそうです」
「へー剣術|遣《つか》いの家《うち》へ泥坊が入ったのですか」
「そうじゃアない、火を放《つ》けたのだそうです、火を放けて燃え上ろうとする処を揉消《もみけ》したんだそうです」
「火を放けたんですか、物にならなくってお互に好《い》い塩梅《あんばい》でした」
「なアに妾《めかけ》を盗んだそうです、剣術遣いの妾を町人が盗
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