お方は一向存じませんから、仰《おっ》しゃりおいて宜しい事ならどうか仰しゃりおきを願います」
國「些《ちっ》とあなたのお耳へ入れては御心配でございましょうが、彼処《あすこ》に寝て居りますのは私《わっち》の嚊《かゝあ》で、昨晩間違いが出来ましたと云うのは、湯の中で臀《けつ》を撫でたとかお情所《なさけどころ》を何《ど》うとかしたと云うので、亭主のある身でそんな真似をされちゃア亭主の前《めえ》へ済まねえと云って、其の男に掛合って居る処へ、此方《こちら》の旦那が来て私《わっち》の嚊を拳骨《げんこつ》で廿とか三十とか打《ぶ》って、筋が抜けたとか骨が折れたとか、なアにサ、何《なん》だかこんな事を申しやすと強請騙りにでも参った様に思召《おぼしめ》すだろうが、そう云う訳ではありませんが、お恥しい話ですが、其の日/\に下駄を削って居ります身分ですから、私《わっち》が看病をすれば仕事をする事が出来ねえ、仕事をする事が出来なけりゃア食う事が出来ねえが、此方《こちら》は御身分もありお宅も広うございやすから、どうかお台所の隅へでも女房を置いて重湯でも飲ましておいてくれゝば、私《わっち》も膏薬の一貼《ひとはり》位
前へ
次へ
全321ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング