郎の所に居ては貴様の為にもならん、さア大事は小事より起るの譬《たとえ》で、片時《かたとき》も置くことは出来ん、出て往《ゆ》け」
 森「何《ど》うか御勘弁を」
 文「ならん、二|言《ごん》は返さん、只今出て往け」
 森「大失策《おおしっさく》をやった、大違《おおちげ》えをやったなア、考えて見りゃア成程|何《ど》うも主《ぬし》ある女の処から艶書《ふみ》なんぞを持って来《き》ちゃア済まねえ、旦那には御恩になっても居りますし、人中《ひとなか》へ出て森|兄《あに》いと云われるのも旦那のお蔭でござえやすから何《ど》うか人間になりてえと思って、旦那の側に居りやすが、御恩送りは出来ねえから身体のきくだけは稼《かせ》いで御恩返《ごおんげえ》しをしようと思って、親爺《おやじ》の葬式《とむらい》まで出してくだすった旦那の側を離れたくねえから、若《も》し知らねえ御新造が来て、森松なんぞのような働きのねえものを置いちゃアいけねえと云われて、逐出《おいだ》されでもするかと思うから、何《ど》うかいゝ御新造をお持たせ申してえと思っている処へ、話があったからうっかりやったんで、今逐出されると往《ゆ》き処がねえから、仕方
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