何時《いつ》でも御隠居さんが、文治に好《い》い女房《にょうぼ》を持たせて初孫《ういまご》の顔を見てえなんて云うが、あんたは御新造をお持ちなせえな」
 文「御新造を持てと云っても己《おれ》のような者には女房《にょうぼ》になってくれ人《て》がないや」
 森「えゝ、旦那が道楽の店でも出せば娘っ子がぶつかって来ますが、旦那は未《いま》だに女の味を知らねえのだから仕方がねえや、何《どん》なのが宜《よ》うごぜえやすえ、長いのが宜うがすかえ、丸いのが宜うがすかえ」
 文「それは長いのが宜《い》いと思っても丸いのを女房《にょうぼ》にするか皆縁ずくだなア」
 森「裏へ越して来た藤原の御新造は何《ど》うです」
 文「左様々々、彼《あれ》は美人だの」
 森「なアに、そうじゃアありやせん、彼は何《ど》うです」
 文「大層世辞がいゝの」
 森「彼は何うです、彼になせえな」
 文「彼になさいと云っても彼は藤原の女房《にょうぼう》だ」
 森「女房じゃアありません、来月別れ話になって、これから孀婦《やもめ》暮しにでもなったら、旦那を連れて来てくれってんです」
 文「嘘をいうな」
 森「嘘じゃアねえ私《わっち》を立花屋
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