じゃアねえ男が惚れやすが、堅いからねえ、何《ど》うとかして連れて往《ゆ》きましょう、私《わっち》が旦那を連れて新道《しんみち》を通る時、お前さんが森さんお寄んないと云うと、私《わっち》が旦那こゝは先《せん》に宅《うち》の裏にいた藤原の御新造《ごしんぞ》の家《うち》だから鳥渡《ちょっと》寄りましょうと云うので連れ込むから」
あ「私ア素人っぽい事をするようだが、手紙を一本書いておいたから、旦那の機嫌の好《い》い時届けておくれ」
森「大形《おおぎょう》になりやしたなア、こりゃアお前さんが書いたのかね」
あ「艶書《いろぶみ》が人に頼まれるものかね」
森「それじゃア機嫌の好い時に届けやしょう」
と云って互いに別れて宅《うち》へ帰って、森松は文治に云おうかと思ったが、正しい人ゆえ、家《うち》にいても品格を正しくしているから口をきく事が出来ません。或日の事母が留守で、文治が縁側へ出て庭を眺《なが》めて居りますから、
森「旦那え」
文「何《なん》だの」
森「今日《こんち》は誠に結構なお天気で」
文「何だ家《うち》の内で常にない更《あらた》まってそんな事を云うものがあるものか」
森「
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