十六歳になる喜代之助の老母とおあさと云う別嬪《べっぴん》、年は廿六ですが一寸《ちょっと》見ると廿二三としか見えない、うすでの質《たち》で色が白く、笑うと靨《えくぼ》がいります。此の靨と云うものは愛敬のあるもので私《わたくし》などもやって見たいと思って時々やって見ましたが、顔が皺《しわ》くちゃだらけになります。おあさは小股《こまた》の切り上った、お尻《しり》の小さい、横骨の引込《ひっこ》んだ上等物で愛くるしいことは、赤児《あかご》も馴染むようですが、腹の中は良くない女でございますけれど、器量のよいのに人が迷います。所で森松が岡惚《おかぼれ》をしましてちょく/\家《うち》の前を通りまして、
森「えー今日《こんち》は」
などと辞《ことば》をかけたり水を汲んでやったり致しますが、妙なもので若い女が手桶《ておけ》を持って行《ゆ》くと「姉さん汲んで上げましょう」と云いますが、これがお婆《ばあ》さんが行って「一つ汲んでおくんなさい」と云うと、井戸を覗いて見て「好《い》い塩梅《あんばい》に水があればいゝが」と云うくらいなことで。森松がちょく/\水を汲んでくれたり、買物や何かして遣《や》りますから、
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