なり》は絽《ろ》でも縮緬《ちりめん》でも繻袢《じゅばん》なしの素肌《すはだ》へ着まして、汗でビショ濡《ぬれ》になりますと、直ぐに脱ぎ、一度|切《ぎ》りで後《あと》は着ないのが見えでございましたと申しますが、婀娜な姿《なり》をして白粉気《おしろけ》なしで、潰《つぶ》しの島田に新藁《しんわら》か丈長《たけなが》を掛けて、笄《こうがい》などは昔風の巾八分長さ一尺もあり、狭い路地は頭を横にしなければ通れないくらいで、立派を尽しましたものでございます。又勇みは神田にありまして皆腕力があります、ワン力と云うから犬の力かと存じますとそうではない、腕に力のあるものだそうでございます。腕を突張《つッぱ》り己《おれ》は強いと云う者が、開けない野蛮の世の中には流行《はやり》ましたもので、神田の十二人の勇《いさみ》は皆十二支を其の名前に付けて十二支の刺青《ほりもの》をいたしました。大工の卯太郎《うたろう》が兎《うさぎ》の刺青を刺《ほ》れば牛右衞門《うしえもん》は牛を刺り、寅右衞門《とらえもん》は虎を刺り、皆|紅差《べにざ》しの錦絵《にしきえ》のような刺青を刺り、亥太郎は猪の刺青を刺りましたが、此の亥太郎は十二
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