新「金は千両|位《ぐらい》出します、足りなければ三千両出しやす」
 文「お前さん方は仕合《しやわ》せだ、此の方がねえ金を出して下さると云うから命の親と思うが宜しい、こんな目出たい事はない」
 友「有難うございます、松屋さまどうぞ決して御損はかけません、稼ぎますればどうかしてお返し申しますから、只今の処一時お助けを願います」
 村「有がたい事、斯《こ》う遣《や》って二人で助かる訳なら笄なども遣って仕舞わなければよかった」
 とこれから松屋新兵衞は山の宿《しゅく》の宿屋へ帰り、お村と友之助は海老屋へ預けまして、翌日紀伊國屋の主人からお村のお母《ふくろ》へ掛合に参りますのが一つの間違いになると云うお話になります。

  六

 文治が友之助を助けた翌日、お村の母親の所へ掛合《かけあい》に参りまして、帰り掛《がけ》に大喧嘩の出来る、一人の相手は神田《かんだ》豊島町《としまちょう》の左官の亥太郎《いたろう》と申す者でございます。其の頃|婀娜《あだ》は深川、勇みは神田と端歌《はうた》の文句にも唄いまして、婀娜は深川と云うのは、其の頃深川は繁昌で芸妓《げいぎ》が沢山居りました。夏向座敷へ出ます姿《
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