なりますから、御無沙汰になります、手前も一杯飲みますから、うっかり飲んで、口が多うございますから、打敲《ぶちたゝ》きをされゝばお茶の水の事や何か喋《しゃべ》れば貴方の御迷惑になろうと思います」
 蟠「フン、だが此の刀を持って質に入れられては困る、他から預って居《お》る金を融通しよう、いろ/\それに付いて貴公に頼む事がある、貴公も私の悪事に左袒《さたん》して、それを喋って意趣返しをしようということもあるまい、お互いに綺麗な身体にはならないから、もう一と稼ぎしようじゃないか」
 忠「どういうことでございます」
 蟠「家《うち》じゃア話が出来ないから、今に舎弟が帰るから亀井戸の巴屋《ともえや》で一杯やって吉原へ行《ゆ》こう」
 忠「取り急ぎますから金子を拝借します」
 蟠「押上《おしあげ》の金座の役人に元手前が剣術を教えたことがある、其処《そこ》へ行《ゆ》けばどうにかなるから一緒に行《ゆ》こう」
 忠「金さえ出来れば参りましょう」
 とこれから巴屋へ往って酒を飲みます。元より好きだから忠五郎どっさり飲みました。
 忠「もう酔いまして、帰りましょう、金子を拝借したい」
 蟠「これは五十金、私《わし》が金座役人の所へ往って此の金は明日《あした》までに届けなければならぬ金だが、吉原へ行《ゆ》けば才覚が出来る、池田金太夫《いけだきんだゆう》という人を知っているだろう」
 忠「河内守《かわちのかみ》の公用人の」
 蟠「そうよ、内証《ないしょう》で遊びに往っている金太夫に遇うまで貴公は他《た》へ往って、赤い切れを掛けた女を抱いて寝て居《お》れば百金は才覚する」
 忠「久しく遊びに参りませんよ、妻《さい》が歿して二年越し独身で居ります……参りたいな、金子を戴いて待っている間、赤い切れと寝ているなどは有難い」
 蟠「金を早く持って帰らんでは市ヶ谷の親類の方はどうする」
 忠「金を持って行《ゆ》けば明日《あした》でも宜しゅうございます」
 蟠「現金な男だ、駕籠というのも何《なん》だからぶら/\歩こう」
 と貸提灯《かしぢょうちん》を提げて雪駄穿きで、チャラリ/\と又兵衛橋《またべえばし》を渡って押上橋《おしあげばし》の処へ来ると、入樋《いりひ》の処へ一杯水が這入って居ります。向うの所は請地《うけじ》の田甫《たんぼ》でチラリ/\と農家の燈火《あかり》が見えます、真の闇夜《やみ》。
 蟠「阿部
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