《かうし》を明けて見ますると、両側《りやうがは》共《とも》に黒木綿《くろもめん》の金巾《かなきん》の二巾位《ふたはゞぐらゐ》もありませうか幕張《まくは》りがいたしてございまして、真黒《まつくろ》で丸《まる》で芝居《しばゐ》の怪談《くわいだん》のやうでございます。処《ところ》へ大きな丈《たけ》三|尺《しやく》もある白張《しらはり》の提灯《ちやうちん》が吊《つる》さがつて居《を》ります、其提灯《そのちやうちん》の割《わり》には蝋燭《ろうそく》が細《ほそ》うございますからボンヤリして、何《ど》うも薄気味《うすきみ》の悪いくらゐ何《なん》か陰々《いん/\》として居《を》ります。軒下《のきした》に縄張《なはば》りがいたしてございます此《こ》の中《うち》に拝観人《はいくわんにん》は皆《みな》立《たつ》て拝《はい》しますので、京都《きやうと》は東京《とうきやう》と違《ちが》つて人気《にんき》は誠に穏《おだ》やかでございまして、巡査《じゆんさ》のいふ事を能《よ》く守り、中々《なか/\》縄《なは》の外へは出ません。一|尺《しやく》ぐらゐ跡《あと》に退《さが》つて待《ま》つて居《ゐ》る様子《やうす》、それ
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