燈《でんきとう》が、段々《だん/\》明《あか》るくなつて来《く》ると、従《した》がつて日《ひ》は西に傾《かたむ》きましたやうでございます。其中《そのうち》に又《また》拍子木《ひやうしぎ》を、二ツ打ち三ツ打ち四ツ打つやうになつて来ると、四ツ辻《つじ》の楽隊《がくたい》が喇叭《らつぱ》に連《つ》れて段々《だん/\》近く聞《きこ》えまする。兵士《へいし》の軍楽《ぐんがく》を奏《そう》しますのは勇《いさ》ましいものでございますが、此《こ》の時は陰々《いん/\》として居《を》りまして、靴《くつ》の音《おと》もしないやうにお歩行《あるき》なさる事で、是《これ》はどうも歩行《ある》き悪《にく》い事で、誠に静《しづ》まり返《かへ》つて兵士《へいし》ばかりでは無い馬までも静《しづか》にしなければいかないと申《まう》す処《ところ》が、馬は畜生《ちくしやう》の事で誠に心ない物でございますから、焦《じれ》つたがり、駈出《かけだ》したり或《あるひ》は跡足《あとあし》でバタ/\やるやうな事《こと》もございました。其《そ》の中《うち》にどうも兵士《へいし》の通《とほ》る事は千人だか数限《かずかぎ》りなく、又《また》
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