のは、隠《かく》し題《だい》の歌《うた》に「二ツ文字《もじ》牛《うし》の角文字《つのもじ》直《すぐ》な文字《もじ》ゆがみ文字《もじ》とぞ君《きみ》は覚《おぼ》ゆれ」是《これ》は恋《こひ》しくといふ隠《かく》し題《だい》の歌で、二ツ文字《もじ》はこ[#「こ」に傍点]の字で、牛《うし》の角文字《つのもじ》は、いろはのい[#「い」に傍点]の字、直《すぐ》な文字《もじ》はし[#「し」に傍点]の字で、ゆがみ文字《もじ》はく[#「く」に傍点]の字《じ》でございます、夫《そ》れですから牛《うし》の角文字《つのもじ》といふのは貴方《あなた》医《い》をお頼《たの》みになつたら何《ど》うでございますといふので。「夫《それ》は僕《ぼく》も家畜病院長《かちくびやうゐんちやう》を呼んで診察《しんさつ》をして貰《もら》ひましたがな……。「お熱《ねつ》は何《ど》んな塩梅《あんばい》でございますか。「熱《ねつ》は京都《きやうと》へ来《き》たせいか平《へい》をん[#「をん」に白丸傍点]でげす。「熱度《ねつど》はどの位《くらゐ》で。「三|条《でう》七|条《でう》と申《まうし》ます。「成《なる》ほど、夫《それ》ぢやア、マア大《たい》したお熱《ねつ》ぢやアないお脈《みやく》の方《はう》は。「脈《みやく》の方《はう》が多《おほ》うございます、九|条《でう》から一|条《でう》二|条《でう》に出越《でこ》す位《くらゐ》な事で。「成《なる》ほど、脈《みやく》の方《はう》が多《おほ》うございますな、脈《みやく》の割《わり》にすると熱《ねつ》が陰《いん》にこもつて居《を》りますな。「モウ[#「モウ」に白丸傍点]/\私《わたし》は迚《とて》も助かるまいと思ひます。「然《そん》な事を仰《おつ》しやつちやアいけませんよ、どうか確《しつ》かりなさい。「熱《ねつ》がモウ少し浮《う》かないでは直りますまいよ。「御心配なさいますな、明日《みやうにち》はキツと御発カン[#「御発カン」に白丸傍点]でございます。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年7月19日作成
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