》の中で首《くひ》ツたけ這入《はい》つて当日《たうじつ》まで待《まつ》て居《を》るのでございますから此《こ》のくらゐ結構《けつこう》な事はございません。又《また》折々《をり/\》は其《そ》のお方《かた》のお供《とも》をいたして、大坂《おほさか》で有名《いうめい》な藤田様《ふぢたさま》の御別荘《ごべつさう》へ参《まゐ》りまして、お座敷《ざしき》を拝見《はいけん》したり、御懐石《ごくわいせき》を頂戴《ちやうだい》した跡《あと》で薄茶《うすちや》を頂《いたゞ》いたりして、誠に此上《このうへ》もない結構《けつこう》な事でございます。丁度《ちやうど》七|日《か》の御当日《ごたうじつ》は往来止《わうらいど》めになるだらうと聞きましたから、昼飯《ひるめし》を食べて支度《したく》をいたし、午後二時ごろから宿《やど》を出ましたが、其処《そこ》までは人力車《くるま》で行《ゆ》かれる処《ところ》で、参《まゐ》りました処《ところ》は堺町《さかひちやう》三|条《でう》北《きた》に入《い》る町《まち》といふ、大層《たいそう》六《む》づかしい町名《ちやうめい》でございまして、里見《さとみ》忠《ちう》三|郎《らう》といふ此頃《このごろ》新築《しんちく》をした立派《りつぱ》な家《うち》で、此処《こゝ》は御案内《ごあんない》の通《とほ》り古器物《こきぶつ》骨董《こつとう》書画類《しよぐわるゐ》を商《あきな》ふ方《かた》で中々《なか/\》面白《おもしろ》い人でございます。何《ど》うも諸方《しよはう》から頼《たの》まれたと見えまして、大分《だいぶ》に宜《よ》いお客様もございます。西京《さいきやう》大坂《おほさか》の芸妓《げいこ》も参《まゐ》つて居《を》りましたが、皆《みな》丸髷《まるまげ》で黒縮緬《くろちりめん》の羽織《はおり》へ一寸《ちよつと》黒紗《くろしや》の切《き》れを縫《ぬ》ひつけて居《を》りまして、其《そ》の様子《やうす》は奥様然《おくさまぜん》とした拵《こし》らへで、皆《みな》其処《そこ》に寄り集まつてお通《とほ》りの時刻《じこく》を待《ま》つて居《を》りますので、其《そ》の中《うち》に五《ご》もく鮨《ずし》が出たり種々《しゆ/″\》御馳走《ごちそう》が出《で》ます中《うち》にチヨン/\と拍子木《ひやうしぎ》を打つて参《まゐ》りました。何《なん》だらうと思つて直《すぐ》に飛出《とびだ》して格子
前へ 次へ
全10ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング