がこはれるとガラ/\/\と流れ出しました。○「南無妙法蓮華経《なむめうほふれんげきやう》々々々々々々々《なむめうほふれんげきやう》」と一心《いつしん》にお題目《だいもく》をとなへてゐると筏《いかだ》はだん/\くづれて自分の乗つてゐる一本になりました。そこへ追つて来たおくまは岩に片足をかけて狙《ねらひ》を定《さだ》めて引《ひ》きがねを引くとズドーンとこだまして筒《つゝ》をはなれた弾丸《たま》は旅人《たびゞと》の髪《かみ》をかすつて向《むか》うの岩角《いはかど》にポーンと当《あた》りました。○「アツ有難《ありがた》いたつた一本のお材木《ざいもく》で助つた。
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(註。最初《さいしよ》此話《このはなし》は芝居話《しばゐばなし》でしたがおくまの弾丸《たま》をのがれての白《せりふ》を左《さ》に記《しる》して置きます、)
「思ひがけなき雪の夜に御封《ごふう》と祖師《そし》の利益《りやく》にて、不思議と命《いのち》助《たす》かりしは、妙法蓮華経《めうほふれんげきやう》の七字より、一|時《じ》に落《おと》す釜《かま》ヶ|淵《ふち》、矢《や》を射《い》る水より鉄砲《てつぱう》の肩を擦《こす》つてドツサリと、岩間《いはま》に響《ひゞ》く強薬《つよぐすり》、名《な》も月《つき》の輪《わ》のおくまとは、食《く》ひ詰者《つめもの》と白浪《しらなみ》の深き企《たく》みに当《あた》りしは後《のち》の話の種《たね》ヶ|島《しま》、危《あぶ》ないことで……(ドン/\/\/\激《はげ》しき水音《みづおと》)あつたよなア――これでまづ今晩《こんばん》はこれぎり――。」
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ](一朝口演、浪上義三郎氏筆記)



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年6月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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