|大分《だいぶ》お早くどうぞ直《すぐ》にお上《あが》りを願います、へい誠に此の通り見苦しい所孝助殿も、御挨拶は後《あと》でします」
 相川はいそ/\と一人で喜び、コッツリと柱に頭を打付《ぶッつ》け、アイタヽ、兎に角|此方《こちら》へと座敷へ通し、
「さて残暑お熱い事でございます、又|昨日《さくじつ》は上《あが》りまして御無理を願ったところ、早速にお聞済《きゝず》み下され有がとう存じます」
飯「昨日はお草々《そう/\》を申しました、如何《いか》にもお急ぎなさいましたから御酒《ごしゅ》も上げませんで、大《おお》きにお草々申上げました」
相「あれから帰りまして娘に申し聞けまして、殿様がお承知の上孝助殿を聟《むこ》にとる事に極って、明日《あす》は殿様お立合の上で結納|取交《とりかわ》せになると云いますと、娘は落涙《らくるい》をして悦びました、と云うと浮気の様ですが、そうではない、お父様《とっさま》を大事に思うからとは云いながら、只今まで御苦労を掛けましたと申しますから、早く丈夫にならなければいけない孝助殿が来るからと申して、直《すぐ》に薬を三|服《ぶく》立付《たてつ》けて飲ませました、それから
前へ 次へ
全308ページ中98ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング