、髪は島田に結って鬢《びん》の毛が顔に下《さが》り、真青《まっさお》な顔で、裾《すそ》がなくって腰から上ばかりで、骨と皮ばかりの手で萩原様の首ったまへかじりつくと、萩原様は嬉しそうな顔をしていると其の側に丸髷《まるまげ》の女がいて、此奴《こいつ》も痩《やせ》て骨と皮ばかりで、ズッと立上《たちあが》って此方《こちら》へくると、矢張《やっぱり》裾が見えないで、腰から上ばかり、恰《まる》で絵に描《か》いた幽霊の通り、それを私《わっち》が見たから怖くて歯の根も合わず、家《うち》へ逃げ帰《けえ》って今まで黙っていたんだが、何《ど》ういう訳で萩原様があんな幽霊に見込まれたんだか、さっぱり訳が分りやせん」
勇「伴藏本当か」
伴「ほんとうか嘘かと云って馬鹿/\しい、なんで嘘を云いますものか、嘘だと思うならお前さん今夜行って御覧なせえ」
勇「己《おら》アいやだ、ハテナ昔から幽霊と逢引《あいびき》するなぞという事はない事だが、尤《もっと》も支那の小説にそういう事があるけれども、そんな事はあるべきものではない、伴藏嘘ではないか」
伴「だから嘘なら行って御覧なせえ」
勇「もう夜《よ》も明けたから幽霊なら居る気
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