《おい》の間柄で、あの真赤《まっか》に酔払《よっぱら》って居るのは叔父さんで、若い綺麗な人が甥だそうだ、甥が叔父に小遣銭《こづかいせん》を呉れないと云う処からの喧嘩だ」
 と云えば、又側にいる人は
「ナーニあれは巾着切《きんちゃくきり》だ」
 などと往来の人々は口に任せて種々《いろ/\》の評判を致している中《うち》に、一人の男が申しますは
「あの酔漢《よっぱらい》は丸山本妙寺《まるやまほんみょうじ》中屋敷に住む人で、元は小出《こいで》様の御家来であったが、身持《みもち》が悪く、酒色《しゅしょく》に耽《ふけ》り、折々《おり/\》は抜刀《すっぱぬき》などして人を威《おど》かし乱暴を働いて市中《しちゅう》を横行《おうぎょう》し、或時《あるとき》は料理屋へ上《あが》り込み、十分|酒肴《さけさかな》に腹を肥《ふと》らし勘定は本妙寺中屋敷へ取りに来いと、横柄《おうへい》に喰倒《くいたお》し飲倒《のみたお》して歩く黒川孝藏《くろかわこうぞう》という悪侍《わるざむらい》ですから、年の若い方の人は見込まれて結局《つまり》酒でも買わせられるのでしょうよ」
「左様《そう》ですか、並大抵《なみたいてい》のもの
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