かも知れん、いつもながら粗忽《そゝっ》かしい爺さんだよ、まア此方《こちら》へ通せ」
と云っていると相川は
「ハイ御免下さい」
と遠慮もなく案内も乞わず、ズカ/\奥へ通り、
相「殿様お帰りあそばせ、御機嫌さま、誠に存外の御無沙汰を致しました、何時《いつ》も相変らず御番疲《ごばんづか》れもなく、日々《にち/\》御苦労さまにぞんじます、厳しい残暑でございます」
飯「誠に熱い事で、おとくさまの御病気は如何《いかゞ》でござるな」
相「娘の病気もいろ/\と心配も致しましたが、何分にも捗々《はか/″\》しく参りませんで、それに就《つい》て誠にどうも……アヽ熱い、お國さま先達《せんだっ》ては誠に御馳走様に相成《あいな》りまして有難う、まだお礼もろく/\申上げませんで、へえ、アヽ熱い、誠に熱い、どうも熱い」
飯「まア少し落着《おちつ》けば風が這入《はい》って随分凉しくなります」
相「折入《おりい》って殿様にお願いの事がございまして、罷出《まかりいで》ました、何《ど》うかお聞済《きゝずみ》を願います」
飯「はてナ、どういう事で」
相「お國様やなにかには少々お話が出来兼《できかね》ますから、どうか御近習
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