たら討とうと思っていますから、孝助は進めば鉄砲で討たれる、退《しりぞ》けば源次郎がいて進退|此《こゝ》に谷《きわま》りて、一生懸命に成ったから、額と総身《そうしん》から油汗が出ます。此の時孝助が図らず胸に浮んだのは、予《かね》て良石和尚も云われたが、退《ひ》くに利あらず進むに利あり、仮令《たとえ》火の中水の中でも突切《つッきっ》て往《ゆ》かなければ本望《ほんもう》を遂げる事は出来ない、憶《おく》して後《あと》へ下《さが》る時は討たれると云うのは此の時なり、仮令一発二発の鉄砲|丸《だま》に当っても何程の事あるべき、踏込んで敵《かたき》を討たずに置くべきやと、ふいに切込み、卑怯だと云いながら喧嘩龜藏の腕を切り落しました。龜藏は孝助が鉄砲に恐れて後《あと》へ下《さが》るように、わざと鼻の先へ出していた所へ、ふいに切込まれたのだから、アッと云って後《あと》へ下《さが》ったが間に合わない、手を切って落すと鉄砲もドッサリと切落して仕舞いました。昔から随分腕の利《き》いた者は瓶《かめ》を切り、妙珍鍛《みょうちんきたえ》の兜《かぶと》を割《き》った例《ためし》もありますが、孝助はそれほど腕が利いており
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