三郎さん、どうか何分願います」
 と出掛けては見たが、今母上が最後の際《きわ》だから行《ゆ》き切れないで、又帰って来ますと、気丈な母ですから血だらけで這出しながら、虫の息で、
母「早く行《ゆ》かんか/\」
 と云うから、孝助は
「へい往《ゆ》きます」
 と後《あと》に心は残りますが、敵を逃がしては一大事と思い、跡を追って行《ゆ》きました。先刻からこれを立聞きして居た龜藏は、ソリャこそと思い、孝助より先《さ》きへ駆けぬけて、トッ/\と駆けて行《ゆ》きまして、
龜「源さま、私《わっち》が今立聞をしていたら、孝助の母親《おふくろ》が咽喉《のど》を突いて、お前《なれ》[#「お前《なれ》」はママ]さん方の逃げた道を孝助に教《おせ》えたから、こゝへ追掛《おっか》けて来るに違《ちげ》えねえから、お前《めえ》さんは此の石橋の下へ抜身《ぬきみ》の姿《なり》で隠れていて、孝助が石橋を一つ渡った所で、私共が孝助に鉄砲を向けますから、そうすると後《あと》へ下《さが》る所を後から突然《だしぬけ》に斬っておしまいなさい」
源「ウム宜しい、ぬかっちゃアいけないよ」
 と源次郎は石橋の下へ忍び、抜身を持って待ち構え、
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