ん、孝助様|後《あと》で御挨拶を致します、私はお國の兄で、十三の時から御恩になり、暖簾《のれん》を分けて戴いたもお母様のお蔭、悪人のお國に義理を立て、何故《なぜ》御自害をなさいました」
 と云う声が耳に通じたか、母は五郎三郎の顔をじっと見詰め、苦しい息をつきながら、
母「五郎三郎、お前はちいさい時から正当《しょうとう》な人で、お前には似合わない彼《あ》のお國なれども、義理に対しお位牌に対し、私が逃がしました、又孝助へ義理の立たんというは、血統《ちすじ》のものが恩義を受けた主人の家が立たないという義理を思い、自害をいたしたので、何《ど》うかお國源次郎の逃げ道を教えてやりたいが、ハッ/\必ずお前怨んでお呉れでないよ」
五「いゝえ、怨む所ではありません、あなたおせつないから私が申しましょう、孝助様お聞き下さい、宇都の宮の宿外《しゅくはず》れに慈光寺という寺がありますから、其の寺を抜けて右へ往《ゆ》くと八幡山、それから十郎ヶ峯から鹿沼へ出ますから、貴方《あなた》お早くおいでなさい、ナアニ女の足ですから沢山は行《ゆ》きますまいから、早くお國と源次郎の首を二つ取って、お母様《っかさま》のお目の見え
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