が一向に分らず、早《は》や主人の年囘《ねんかい》にも当る事ゆえ、一度江戸へ立帰らんと思い立ち、日数《ひかず》を経て、八月三日江戸表へ着《ちゃく》いたし、先《ま》ず谷中の三崎村なる新幡随院へ参り、主人の墓へ香花《こうげ》を手向《たむ》け水を上げ、墓原《はかはら》の前に両手を突きまして、
孝「旦那様|私《わたくし》は身|不肖《ふしょう》にして、未《ま》だ仇《あだ》たるお國源次郎に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》り逢わず、未だ本懐は遂げませんが、丁度旦那様の一周忌の御年囘に当りまする事ゆえ、此の度《たび》江戸表へ立帰り、御法事御供養をいたした上、早速又|敵《かたき》の行方を捜しに参りましょう、此の度は方角を違え、是非とも穿鑿《せんさく》を遂げまするの心得、何卒《なにとぞ》草葉の蔭からお守りくださって、一時《いっとき》も早く仇の行方の知れまするようにお守り下されまし」
と生きたる主人に物云う如く恭《うや/\》しく拝《はい》を遂げましてから、新幡随院の玄関に掛りまして、
「お頼み申します/\」
取次「どウれ、はア何方《どちら》からお出《い》でだな」
孝「手前は元牛込の飯島平左
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