とする、其の側へお徳はすり寄り袂《たもと》を控え、涙に目もとをうるましながら、
「御機嫌様よろしく」
と縋《すが》り付くを孝助は慰《なだ》め、善藏に送られ出立しました。
十六
白翁堂勇齋は萩原新三郎の寝所《ねどこ》を捲《ま》くり、実にぞっと足の方から総毛立つほど怖く思ったのも道理、萩原新三郎は虚空を掴《つか》み、歯を喰いしばり、面色土気色に変り、余程な苦しみをして死んだものゝ如く、其の脇へ髑髏《どくろ》があって、手とも覚しき骨が萩原の首玉《くびったま》にかじり付いており、あとは足の骨などがばら/\になって、床の中《うち》に取散《とりち》らしてあるから、勇齋は見て恟《びっく》りし、
白「伴藏これは何《なん》だ、おれは今年六十九に成るが、斯《こ》んな怖ろしいものは初めて見た、支那の小説なぞにはよく狐を女房にしたの、幽霊に出逢ったなぞと云うことも随分あるが、斯様《かよう》な事にならないように、新幡随院の良石和尚に頼んで、有難い魔除《まよけ》の御守《おまもり》を借り受けて萩原の首を掛けさせて置いたのに、何《ど》うも因縁は免《のが》れられないもので仕方がないが、伴藏首に掛
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