《くれえ》な怖いもなア見た事はねえ」
 とおみねは聞くよりアッと声をあげる。
伴「おゝ手前《てめえ》の声でなお怖くなった」
みね「何《ど》うなっているのだよ」
伴「何うなったの斯《こ》うなったのと、実に何《なん》とも彼《か》とも云いようのねえ怖《こえ》えことだが、これを手前《てめえ》とおれと見たばかりじゃア掛合《かゝりえい》にでもなっちゃア大変《てえへん》だから、白翁堂の爺さんを連れて来て立合《たちえい》をさせよう」
 と白翁堂の宅へ参り、
伴「先生/\伴藏でごぜえやす、ちょっとお明けなすって」
白「そんなに叩かなくってもいゝ、寝ちゃアいねえんだ、疾《と》うに眼が覚めている、そんなに叩くと戸が毀《こわ》れらア、どれ/\待っていろ、あゝ痛《い》たゝゝゝ戸を明けたのに己の頭をなぐる奴があるものか」
伴「急いだものだから、つい、御免なせえ、先生ちょっと萩原様の所へ往って下せえ、何うかしましたよ、大変《てえへん》ですよ」
白「何うしたんだ」
伴「何うにも斯うにも、私《わっち》が今おみねと両人《ふたり》でいって見て驚いたんだから、お前《めえ》さん一寸《ちょっと》立合って下さい」
 と聞くより勇齋
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