にいる。
飯「孝助こちらへ来い」
と気丈な殿様なれば袂《たもと》にて疵口《きずぐち》を確《しっ》かと押えてはいるものゝ、血《のり》は溢《あふ》れてぼたり/\と流れ出す。飯島は血に染《し》みたる槍を杖として、飛石伝《とびいしづた》いにヒョロ/\と建仁寺垣の外なる花壇の脇の所へ孝助を連れて来る。孝助は腰が抜けてしまって、歩けないで這って来た。
孝「へい/\間違《まちがい》でござります」
飯「孝助|己《おれ》の上締《うわじめ》を取って疵口を縛れ、早く縛れ」
と云われても、孝助は手がブル/\とふるえて思うまゝに締らないから、飯島自ら疵口をグッと堅く締め上げ、猶《なお》手をもって其の上を押え、根府川《ねぶかわ》の飛石の上へペタ/\と坐る。
孝「殿様、とんでもない事をいたしました」
とばかりに泣出《なきいだ》す。
飯「静かにしろ、他《ほか》へ洩れては宜《よろ》しくないぞ、宮野邊源次郎めを突こうとして、過《あや》まって平左衞門を突いたか」
孝「大変な事をいたしました、実は召仕《めしつかい》のお國と宮野邊の次男源次郎と疾《とく》より不義をしていて、先月《あとげつ》廿一日お泊番《とまりばん》の時、
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