忍び来る者は、寝衣姿《ねまきすがた》なれば、慥《たしか》に源次郎に相違ないと、孝助は首を差延《さしの》べ様子を窺うに、行灯《あんどう》の明りがぼんやりと障子に映るのみにて薄暗く、はっきりそれとは見分けられねど、段々中二階の方へ行《ゆ》くから、孝助はいよ/\源次郎に違いなしとやり過《すご》し、戸の隙間《すきま》から脇腹を狙って、物をも云わず、力に任せて繰出《くりだ》す槍先は過《あやま》たず、プツリッと脾腹《ひはら》へ掛けて突き徹《とお》す。突かれて男はよろめきながら左手《ゆんで》を延《のば》して槍先を引抜《ひきぬ》きさまグッと突返《つきかえ》す。突かれて孝助たじ/\と石へ躓《つまず》き尻もちをつく。男は槍の穂先を掴《つか》み、縁側より下へヒョロ/\と降り、沓脱石《くつぬぎいし》に腰を掛け、
「孝助外庭へ出ろ/\」
と云われて孝助、オヤ、と言って見ると、恟《びっく》りしたは源次郎と思いの外《ほか》、大恩受けたる主人の肋骨《あばら》へ槍を突掛《つきか》けた事なれば、アッとばかりに呆《あき》れはて、唯《たゞ》キョトキョト/\として逆上《のぼせ》あがってしまい、呆気《あっけ》に取られて涙も出ず
前へ
次へ
全308ページ中158ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング