た。孝助は玄関に参り、欄間《らんま》に懸《かゝ》ってある槍をはずし、手に取って鞘《さや》を外《はず》して検《あらた》めるに、真赤《まっか》に錆《さ》びて居りましたゆえ、庭へ下《お》り、砥石《といし》を持来《もちきた》り、槍の身をゴシ/\研《と》ぎはじめていると、
飯「孝助々々」
孝「へい/\」
飯「何《なん》だ、何をする、どう致すのだ」
孝「これは槍でございます」
飯「槍を研いで何《ど》う致すのだえ」
孝「余《あんま》り真赤《まっか》に錆《さび》ておりますから、なんぼ泰平の御代《みよ》とは申しながら、狼藉《ろうぜき》ものでも入《い》りますと、其の時のお役に立たないと思い、身体が閑でございますから研ぎ始めたのでございます」
飯「錆槍《さびやり》で人が突けぬような事では役にたゝんぞ、仮令《たとえ》向うに一|寸幅《すんはゞ》の鉄板《てついた》があろうとも、此方《こちら》の腕さえ確《たしか》ならプツリッと突き抜ける訳のものだ、錆ていようが丸刃《まるは》であろうが、さような事に頓着《とんじゃく》はいらぬから研ぐには及ばん、又憎い奴を突殺《つきころ》す時は錆槍で突いた方が、先の奴が痛いから此方が却
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