る事と思い、心の中《うち》で仕済ましたりと思っている処《ところ》へ、金子が出て、孝助に謝まれと云うから残念で堪《たま》らないけれども、仕方がないから、
國「孝助どん誠に重々すまない事を致しました、何《ど》うか勘弁しておくんなさいましよ」
孝「なに宜《よろ》しゅうございます、お金が出たから宜《い》いが、若《も》しお手打にでもなるなら、殿様の前でお為になる事を並べ立《たて》て死のうと思って……」
 と急込《せきこ》んで云いかけるを、飯島は、
飯「孝助何も云って呉れるな己にめんじて何事もいうな」
孝「恐れ入ります、金子は出ましたが、彼《あ》の胴巻は何《ど》うして私《わたくし》の文庫から出ましたろう」
飯「あれはホラいつか貴様が胴巻の古いのを一つ欲しいと云った事があったっけノウ、其の時おれが古いのを一つやったじゃないか」
孝「ナニさような事は」
飯「貴様がそれ欲しいと云ったじゃないか」
孝「草履取の身の上で縮緬《ちりめん》のお胴巻を戴いたとて仕方がございません」
飯「此奴《こいつ》物覚えの悪いやつだ」
孝「私《わたくし》より殿様は百両のお金を仕舞い忘れる位ですから貴方《あなた》の方が物覚えがわ
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