ますが、降りでもすると仕方がありません、身体のお毒になりますからお遣いなさいよ」
新「行水は日暮方表で遣うもので、私《わたくし》は少し訳があって表へ出る事の出来ない身分だからいけないよ」
伴「それじゃアあすこの三畳の畳を上げてお遣《つけ》えなせえ」
新「いけないよ、裸になる事だから、裸になる事は出来ないよ」
伴「隣の占者《うらない》の白翁堂先生がよくいいますぜ、何《なん》でも穢《きたな》くして置くから病気が起ったり幽霊や魔物などが這入《はい》るのだ、清らかにしてさえ置けば幽霊なぞは這入られねえ、じゞむさくして置くと内から病が出る、又穢くして置くと幽霊がへいって来ますよ」
新「穢くして置くと幽霊が這入って来るか」
伴「来る所《どころ》じゃアありません両人《ふたり》で手を引いて来ます」
新「それでは困る、内で行水を遣うから三畳の畳を上げてくんな」
というから、伴藏夫婦はしめたと思い、
伴「それ盥《たらい》を持って来て、手桶《ておけ》へホレ湯を入れて来い」
などと手早く支度をした。萩原は着物を脱ぎ捨て、首に掛けているお守《まもり》を取りはずして伴藏に渡し、
新「これは勿体《もったい》ない
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