金を持って来ておくんなせえ、私《わっち》ども夫婦は萩原様のお蔭《かげ》で何《ど》うやら斯《こ》うやら暮しをつけて居ります者ですから、萩原様に万一《もしも》の事が有りましては私共《わたくしども》夫婦は暮し方に困りますから、百両のお金を下さったなら屹度《きっと》お札を剥《はが》しましょうというと、幽霊は明日《あした》の晩お金を持って来ますからお札を剥してくれろ、それに又萩原様の首に掛けていらっしゃる海音如来の御守《おまもり》があっては入る事が出来ないから、どうか工夫をして其のお守を盗み、外《ほか》へ取捨てゝ下さいと云ったは、金無垢《きんむく》で丈《たけ》は四寸二分の如来様だそうだ、己も此の間お開帳の時ちょっと見たが、あの時坊さんが何か云ってたよ、抑《そ》も何《なん》とかいったっけ、あれに違《ちげ》えねえ、何《なん》でも大変な作物《さくもの》だそうだ、あれを盗むんだが、どうだえ」
かね「どうも旨いねえ、運が向いて来たんだよ、其の如来様はどっかへ売れるだろうねえ」
伴「何《ど》うして江戸ではむずかしいから、何所《どこ》か知らない田舎へ持って行って売るのだなア、仮令《たとい》潰《つぶ》しにしても
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