\》しく、
露「アノ新三郎様、私《わたくし》が若《も》し親に勘当されましたらば、米と両人をお宅《うち》へ置いて下さいますかえ」
新「引取《ひきと》りますとも、貴方《あなた》が勘当されゝば私は仕合《しあわ》せですが、一人娘ですから御勘当なさる気遣《きづか》いはありません、却《かえ》って後《あと》で生木《なまき》を割《さ》かれるような事がなければ宜《い》いと思って私は苦労でなりませんよ」
露「私《わたくし》は貴方より外《ほか》に夫《おっと》はないと存じておりますから、仮令《たとい》此の事がお父《とっ》さまに知れて手打《てうち》に成りましても、貴方の事は思い切れません、お見捨てなさるときゝませんよ」
と膝に凭《もた》れ掛りて[#「凭《もた》れ掛りて」は底本では「恁《もた》れ掛りて」]睦《むつ》ましく話をするは、余《よっ》ぽど惚《ほ》れている様子だから。
伴「これは妙な女だ、あそばせ言葉で、どんな女かよく見てやろう」
と差し覗《のぞ》いてハッとばかりに驚き、
「化物《ばけもの》だ/\」
と云いながら真青《まっさお》になって夢中で逃出《にげだ》し、白翁堂勇齋の処《ところ》へ往《ゆ》こうと思って駈出《かけだ》しました。
七
飯島家にては忠義の孝助が、お國と源次郎の奸策《わるだくみ》の一伍一什《いちぶしゞゅう》を立聞《たちぎゝ》致しまして、孝助は自分の部屋へ帰り、もう是までと思い詰め、姦夫《かんぷ》姦婦《かんぷ》を殺すより外《ほか》に手段《てだて》はないと忠心一|途《ず》に思い込み、それに就《つい》ては仮令《たとい》己《おれ》は死んでも此のお邸《やしき》を出まい、殿様に御別条《ごべつじょう》のないように仕ようと、是から加減が悪いとて引籠《ひきこも》っており、翌朝《よくちょう》になりますと殿様はお帰りになり、残暑の強い時分でありますから、お國は殿様の側で出来たてのお供《そなえ》見たように、団扇《うちわ》であおぎながら、
國「殿様御機嫌|宜《よろ》しゅう、私《わたくし》はもう殿様にお暑さのお中《あた》りでもなければよいと毎日心配ばかりしています」
飯「留守へ誰《たれ》も参りは致さなかったか」
國「あの相川《あいかわ》さまが一寸《ちょっと》お目通りが致したいと仰しゃって、お待ち申して居ります」
飯「ほウ相川|新五兵衞《しんごべえ》が、又医者でも頼みに参ったの
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