ゐ》るのを殿《との》が聴付《きゝつけ》て殿「コリヤ/\登《のぼる》は出たか。登「ヘイ、御機嫌《ごきげん》宜《よろ》しう。殿「何《ど》うぢや、工合《ぐあい》は。登「何《ど》うも劇剤《げきざい》を多量《たりやう》にお用《もち》ひに相成《あひなり》ましたものと見えて、今日《けふ》は余程《よほど》加減《かげん》が悪うござります。殿「木内《きのうち》は何《ど》ういたした。登「彼《あれ》も罷出《まかりいで》ましたが、これも強く逆上《ぎやくじやう》いたし眼《め》がかすみ、頭《あたま》に熱を持《も》ち、カツカと致《いた》して堪《たま》らぬ抔《など》と申《まう》して居《をり》まする、夫《それ》に可愛想《かあいそう》なのは大原伊丹《おほはらいたみ》で、彼《あれ》は到頭《たうとう》生体《しやうたい》なしで未《ま》だ夢中《むちゆう》で居《を》ります。殿「ムヽー、彼《あれ》だけの手当《てあて》に及《およ》んでも息が出んと申《まう》せば最早《もはや》全《まつた》く命数《めいすう》が尽《つ》きたのかも知れぬて、何《ど》うしても気《き》が附《つ》かぬか。登「ヘイ、色々《いろ/\》に介抱《かいはう》いたしましたが気《き》が附《つ》きませぬ、此上《このうへ》は如何《いかゞ》いたしませう。殿「イヤ、全《まつた》く生体《しやうたい》なければ幸《さひは》ひぢやて、今度《こんど》は解剖《ふわけ》ぢや。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年6月19日作成
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