中《なか》から色も変《かは》らず山吹色《やまぶきいろ》の古金《こきん》が出るから、慌《あは》てゝ両方《りやうはう》の袂《たもと》へ入《い》れながら。金「穏坊《をんばう》の畜生《ちくしやう》、此方《こつち》へ這入《はいつ》て来《き》やアがると肯《きか》ねえぞ、無闇《むやみ》に這入《へいり》やアがるとオンボウ焼《や》いて押付《おつつ》けるぞ。と悪体《あくたい》をつきながら穏坊《をんばう》の袖《そで》の下《した》を掻潜《かいくゞ》つてスーツと駈出《かけだ》して行《ゆ》きました。穏「アレ、乱暴狼藉《らんぼうらうぜき》な奴《やつ》もあればあるものだ、アレ逃《に》げてツちまつた。金兵衛《きんべゑ》さんは此金子《このかね》を以《もつ》て、芝《しば》金杉橋《かなすぎばし》の本《もと》へ、黄金餅《こがねもち》と云《い》ふ餅屋《もちや》を出したのが、大層《たいそう》繁昌《はんじやう》いたした。と云《い》ふ一|席話《せきばなし》でござります。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年8月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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