黄金餅
三遊亭円朝

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)昔時《むかし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|服《ぷく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポロ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 ずツと昔時《むかし》芝《しば》の金杉橋《かなすぎばし》の際《きは》へ黄金餅《こがねもち》と云《い》ふ餅屋《もちや》が出来《でき》まして、一時《ひとしきり》大層《たいそう》流行《はやつ》たものださうでござります。何《ど》ういふ訳《わけ》で黄金餅《こがねもち》と名《なづ》けたかと申《まう》すに、芝《しば》将監殿橋《しやうげんどのばし》の際《きは》に極貧《ごくひん》の者ばかりが住《すん》で居《ゐ》る裏家《うらや》がござりまして金山寺屋《きんざんじや》の金兵衛《きんべゑ》と申《まう》す者の隣家《となり》に居《ゐ》るのが托鉢《たくはつ》に出《で》る坊《ばう》さんで源八《げんぱち》と申《まう》す者、近頃《ちかごろ》何《ど》う致《いた》したのか煩《わづら》つて寝て居《ゐ》るから見舞《みまつ》てやらうと金兵衛《きんべゑ》が出《で》て参《まゐ》り、金「御免《ごめん》なさいよ。源「アヽ御入来《おいで》なさい。見《み》ると煎餅《せんべい》のやうな薄《うす》つぺらの蒲団《ふとん》で爪《つめ》で引掻《ひつか》くとポロ/\垢《あか》が落《おち》る冷たさうな蒲団《ふとん》の上《うへ》に転《ころ》がつて居《ゐ》るが、独身者《ひとりもの》だから薬《くすり》一|服《ぷく》煎《せん》じて飲《の》む事も出来《でき》ない始末《しまつ》、金「私《わつし》はね今日《けふ》はアノ通《とほ》り朝から降《ふ》りましたので一|日《にち》楽《らく》を仕《し》ようと思つて休んだが、何《ど》うも困つたもんですね、何《なん》ですい病気は。源「ハツ/\いえもう貴方《あなた》、年が年ですから死病《しびやう》なんでせう。金「お前《まへ》さん其様《そん》な気の弱い事を云《い》つちやアいけませぬ、石《いし》へ獅噛附《しがみつい》ても癒《なほ》らうと云《い》ふ了簡
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