事を聴くんだよといいました」
粂「早く彼方《あっち》へお出で、何時までも此処《こゝ》にいると又叱られるから」
定「ヘエ、今行きます」
粂「清助《せいすけ》どんは何うしたえ」
定「今物置に薪《まき》を積直して居ましたっけ」
粂「ちょいと清助どんにも暇乞《いとまごい》をして行こう」
定「じゃア私も一緒に行きましょう」
粂「清助どん、何うも長々お世話になりました」
清「おゝ粂どんか、今ね己《おれ》が聞いたんだ、おさきどんがの話に、今日急に粂どんがお暇《いとま》になったてえから、己ハアほんとうに魂消《たまげ》ただ、何でもこれは番頭野郎の策略に違《ちげ》えねえ、彼奴《あいつ》は厭に意地が悪くって、何かお前様《めえさま》を追出させるように巧《たく》んだに違え無《ね》えだ、本当にあのくれえ憎らしい野郎も無えもんだ、ちょいと何一つくれるんでもお前《めえ》さんと番頭とではこう違うだ、こんな物は己《おら》ア嫌《きれ》えだ、お前《めえ》も嫌えかも知れねえが喰うなら喰ってくんろ、勿体ねえからってお前《めえ》さんは旨《うめ》え物をくれるだが、番頭野郎は自分がそれ程に好かねえもんでも惜しがってくれ
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