奈何せん。支那黨より見れば、金朴の徒もまた閔の徒に異ならざる也。人或は大院君が平壤の大戰中に際して、私かに清國に通ぜんとしたるを云々して、其の反覆を尤む。然れども反雲、覆雨、彼に就き之に就きて、以て自ら安きを謀るは、其歴代政治家に一貫したる主義なるを奈何せん。朝鮮の政治家[#「朝鮮の政治家」に白丸傍点]、誰か能く[#「誰か能く」に白丸傍点]、此の國民的性情と[#「此の國民的性情と」に白丸傍点]、歴史的積勢の外に出るを得ん耶[#「歴史的積勢の外に出るを得ん耶」に白丸傍点]、已に然り[#「已に然り」に白丸傍点]、日本國民は其あらゆる同情を傾瀉して金朴の二人を保護したりと雖も[#「日本國民は其あらゆる同情を傾瀉して金朴の二人を保護したりと雖も」に白丸傍点]、誰れか金朴が能く百年我に負かざるを保せん耶[#「誰れか金朴が能く百年我に負かざるを保せん耶」に白丸傍点]。金の末路、清國に赴くの心事を知るものは必らず、そを知らん。朴泳孝が現に朝鮮内閣にありて、日本に對して如何なる態度を示めしつゝある乎。之を知るものはまた能く朝鮮の日本に對する將來の態度を知るを得べし。吾人は朴泳孝を親愛し其日本に負かざるべきを信ぜんと欲す。吾人は魚允中を親愛すること泳に※[#「冫+咸」、146−下−4]ぜず。其日本の恩義に負かざるを信ぜんと欲す。然れども[#「然れども」に二重丸傍点]、吾人は日本の恩義よりも更らに彼等に取りて重大なるものあるを忘るべからず[#「吾人は日本の恩義よりも更らに彼等に取りて重大なるものあるを忘るべからず」に二重丸傍点]。彼等の權力也[#「彼等の權力也」に二重丸傍点]。彼等の見る所の朝鮮の運命也[#「彼等の見る所の朝鮮の運命也」に二重丸傍点]。彼等日本を以て此二者に撞着すると爲すとき[#「彼等日本を以て此二者に撞着すると爲すとき」に二重丸傍点]、豈に飜然とし手を覆すなきを保せん耶[#「豈に飜然とし手を覆すなきを保せん耶」に二重丸傍点]。况んや彼等もまた大院君[#「况んや彼等もまた大院君」に二重丸傍点]、閔泳駿と等しく朝鮮政治家なるを耶[#「閔泳駿と等しく朝鮮政治家なるを耶」に二重丸傍点]。
彼等の山河已に生色なし、彼等の國力、はた自ら立つ能はず、彼等の固有の實力、已に自ら立つるに足るものなし。然れども、セルヴヰ[#「セルヴヰ」に二重傍線]、モンテネグロ[#「モンテネグロ」に二重傍線]の政治家が、歐洲の權力平衡を知るが如く、彼等は列國の愼僞を知る。彼等はマキアベーリ[#「マキアベーリ」に傍線]を讀まざるも、其半島國たる形勢は、自然に彼等に教ゆるにマキアベーリ[#「マキアベーリ」に傍線]主義を以てす。彼等は日本の兵力を見て恐怖すと雖も、世界の表面には日本の兵力と匹敵する國民ありて常に之に乘ぜんとするを知れり。彼等は支那の勢力已に日本の爲めに朝鮮より一掃せらるゝを見るも、更らに第二の支那たらんとするものあるを知れり。第二の支那を作るの易々たるを知れり。日本は朝鮮の獨立を世界に公言したるがため、また朝鮮の主權を如何ともする能はざるを知れり。彼等は其獨立の名あるがために、獨立の實を日本に求むるも、順にして事正しく列國の皆な之を承認すべきを知れり。彼等は一の兵力を有せざるも、列國の權力平均と、妬嫉の情とを利用せば、以て日本の干渉を遮ぎるに足るべきを知れり。彼等は半開國と雖も、暹羅安南の如きものにあらず。半島國固有の氣質は、彼等をして外交的技倆を具へしむ。而して今や彼等は日本に對して漸やく嫌たらざらんとし[#「而して今や彼等は日本に對して漸やく嫌たらざらんとし」に白丸傍点]、漸やく他の勢力を利用するも日本の干渉を※[#「冫+咸」、146−下−26]ぜんとするを見る[#「漸やく他の勢力を利用するも日本の干渉を※[#「冫+咸」、146−下−26]ぜんとするを見る」に白丸傍点]。現に三百萬圓の貸附金の如きも、彼等は約しては負き、負きては約し、曖昧躊躇す。而して其の實は他の某國より五百萬圓を貸與せんと云ふの喚諾に迷ふて然る也。また、其の三百萬圓の抵當の如きも、日本政府、海關税を以て之に充てしめんとすれば、已に他の國家に對して抵當とせるを發見す。列國の形勢[#「列國の形勢」に丸傍点]、經濟上の欠乏[#「經濟上の欠乏」に丸傍点]、其政治家の狡獪は[#「其政治家の狡獪は」に丸傍点]、内外上下相結合して[#「内外上下相結合して」に丸傍点]、到底日本をして主一の保護者たらしめず[#「到底日本をして主一の保護者たらしめず」に丸傍点]。第二の支那を他より招かずんば休せざるべし[#「第二の支那を他より招かずんば休せざるべし」に丸傍点]。此時に方つては吾人は恐るべき一大勢力と相交渉せざるべからざるを發見せん[#「此時に方つては吾人は恐るべき一大勢力と相交渉せざるべからざるを發見
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