ョロ子だけ中に這入らせようとしますと、天井が低いので、ヒョロ子がしゃがんでも頭が支《つか》えます。そればかりでなく、豚吉が右側に乗ると馬車が右に引っくり返りそうになり、左に乗ると左側の車の心棒が曲りそうになります。
「これあ大変なお客様だ。折角|無代価《ただ》で乗ってもらおうと思っているのに、二人共乗れないとは困ったな」
「おれも乗りたいけれども、これじゃ仕方がない」
「もうよしましょうや。あなたも些《すこ》し辛棒しておあるきなさいよ」
こんなことを云っているうちに、馬車屋のお爺さんは不意に手をポンとたたいて、
「うまいことを思い付いた。二人とも馬車の屋根に乗んなさい。私がソロソロあるかせるから」
「ウン、それはいい思い付きだ」
と豚吉もよろこびました。けれども背が低いので登ることが出来ません。
それを見たヒョロ子は、イキナリ豚吉をうしろから抱《かか》えて、ヒョイと馬車の屋根に乗せまして、自分も飛び上がりました。
馬車屋のお爺さんはビックリして眼をまん丸にしていました。
馬車が動き出すと、屋根の上がまん丸くなって今にも落ちそうになりますので、夫婦はしっかり抱き合っていなければ
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