これあ珍しい御夫婦だ。おれああんた方のような珍らしい御夫婦は初めて見た。どうもえらく高い人だな。別嬪《べっぴん》さんの方はまるで棹《さお》のようだ。それに又、旦那様の肥って御座ること、どうだ。まるで手まりのようだ」
と馬車屋は大きな声で云いながら近寄って来ましたので、夫婦は真赤になってしまいました。
「あたしはこんな馬車屋さんの馬車には乗らない。今にどんなことを云ってひやかすかわからないから」
とヒョロ子は云いました。
「馬鹿を云え。一所に乗って行かなければ何にもならないじゃないか……。どうだい、馬車屋さん。これから町まで倍のお金を払うから、大急ぎで乗せて行ってくれないか」
と云いました。
馬車屋は大きな手をふって云いました。
「滅相な。お金なんぞは一文も要りません。あんた方のような珍らしい夫婦を乗せるのは一生の話の種だ。さあさあ、乗ったり乗ったり」
と云ううちに、馬車のうしろの戸をあけてくれました。
ところが、その入り口が小さいので、豚吉の肥った身体《からだ》がどうしても這入りません。しかたがありませんから、馬車の前の馭者台《ぎょしゃだい》の処にお爺さんと並んで乗って、ヒ
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