ました。二人は猪や鹿の骨を背中に入れられるのは好きませんでしたけれども、一生片輪でいるよりもその方がいいので、
「では猪と鹿を買って来ます」
と云って、無茶先生の家を出ました。
豚吉とヒョロ子とは無茶先生の家を出て、この町の獣《けもの》市場に来ましたが、どこを探しても鹿だの猪だのを売っているところはありません。みんな牛だの馬だの犬だの豚だのばかりです。二人はしかたなしに市場の主人に会って、
「どこかここいらに、生きた鹿だの猪だのを売っているところは無いか」
と尋ねますと、主人は頭を振って、
「鹿や猪の肉を売っているところはありますけれども、生きたのを売っているところはありません。動物園になら居るかも知れませんけれど、あそこのは見物に見せるためで売るのではありませんからダメでしょう。しかし、一体そんなものをあなた方は何になさるのですか」
と尋ねました。二人はきまりがわるう御座いましたけれども、困っているところでしたからわけをすっかり話しまして、どうかして助かる工夫は無いものかと相談をしますと、主人は腹を抱《かか》えて笑い出しました。
二人はおこってここを出て行こうとしますと、市場の主人は又押し止《とど》めて、
「ちょっと待って下さい」
と云いました。
「この町から一里ばかり離れたところの村に神様があって、きょうがちょうどお祭りの筈です。そこには毎年いろんな見世物が来ますが、その中には獣《けもの》の見世物もあって、その中に猪や鹿も居る筈です。今年は来ているかどうかわかりませんが、行って御覧なさい。もしその見世物が居たら、お金さえ沢山出せば、ライオンでも象でも売ってくれるに違いないと思います。いっその事、あなた方は思い切ってライオンや象を買って、その骨を入れたら大きくて丈夫でよくはありませんか」
と又笑い出しました。
二人は腹が立ちましたけれども、折角いい事を教えてくれたのですから、御礼を云ってここを出まして、それから二人連れでエッチラオッチラ一里ばかり歩いてその村に来ますと、成る程、村中は大変な騒ぎで、今が祭りの最中です。
その中へ世にも珍らしい姿の夫婦がやって来たものですから、サア大変です。
「ヤア。見世物みたような珍らしい夫婦が来た」
というので、ワイワイワイワイ押しかけて来て、夫婦は歩くことも出来ません。
豚吉もヒョロ子も恥かしくなって逃げ出
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