は指環を取り返さなくちゃならない」
と云いながら、倒れた男を丸裸にして調べましたが、銅貨が二ツ三ツあった限《きり》で他に何もありませんでした。この様子を最前から見ていた禿頭《はげあたま》の紳士がありました。この紳士はこの町で名高い吝《けち》ん坊でしたが、つかつかと乞食の処に近よりまして、その若い男の死骸を買おうと申しました。そして乞食仲間に少しばかりのお金を遣って、若い男の死骸を買い取って、馬車に乗せて家に持って帰りまして、自分の居間に寝かしてお医者を呼びにやりました。そしてお医者が来ると禿紳士は、家《うち》中のものを皆遠ざけて、若い乞食の死骸を見せて、極く内緒でこの死骸をズタズタに切って、金剛石《ダイヤモンド》の指環を探してくれと頼みました。
お医者は驚いて、私はそんな恐ろしい事は出来ませぬと断りますと、禿紳士は大層|憤《おこ》って、それではお前も一緒に殺してしまうと云いますから、仕方なしに承知して、それでは家《うち》に行って、人の身体《からだ》を切る器械を取って来てくれと頼みました。すると紳士は医者を室に閉じこめて、外から鍵をかけて、自分で器械を取りに行きました。
この様子を
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