く女王様の耳まで届くくらい澄み渡って響きました。
お寺の坊さんも、村の人々も、子供までも、みな眼をさましたほど、美しい、清らかな音《ね》が響き渡りました。
ミミは夢中になって喜びながら、お寺の鐘撞き堂を駈け降りました。
「ああ……夢ではなかった。夢ではなかった。お兄様はほんとうに湖の底に待っていらっしゃる。
妾《わたし》が来るのを待っていらっしゃる。
ああ、嬉しい。ああ、嬉しい。妾はもうほんとうにお兄様に会えます。そうして、もう二度と再び離れるようなことはないのです。ああ、うれしい……」
こう云ううちに、ミミは最前の花の鎖のところまで駈けもどって来ました。その花の鎖の端を両手でしっかりと握って、静かに湖の底へ沈んでゆきました。――空のまん中にかかったお月様をあおぎながら……。
村中の人々は鐘の音に驚いて、老人《としより》や子供までみんなお寺に集まって来ました。お寺の坊さんと一所になって、どうしたのだろうどうしたのだろうと話し合いましたが、誰が鐘を打ったのか、どうして鐘が鳴ったか、知っているものは一人もありませんでした。
そのうちに鐘撞き堂の石段に、ミミの露に濡れた小さな足
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