《のち》何万年経ってもこの水は濁らない……村にわるいことも起らないのだ……と思うと、ルルは嬉しくてたまりませんでした。その嬉しさに、疲れた身体《からだ》を踊らせながら女王様の前に帰って来ました。
 その時にルルは、今までにない美しい御殿の様子に気が付きました。
 御殿の大広間は夜光虫の薄紫の光りで夢のように照らされておりました。広い広い部屋一パイに飾られた水艸《みずくさ》の白い花は、ほのかな香《にお》いを一面にただよわせておりました。
 その中に群あつまる何万とも何億とも知れぬ魚の数々。その奥の奥に見える紫水晶の階段。その上に立っていられる女王様のお姿。
 そうして今一人の美しい女の子の姿……ミミ……。
 ルルは思わず壇の上に駈け上ってミミを抱きました。ミミもしっかりとルルの首に獅噛《しが》み付きました。
 今まで虹のようにジッと並んでいた数限りない魚の群は、この時ゆらゆらと動き出しました。青、赤、紫、緑、黄色、銀色、銅色、黄金《こがね》色と、とりどり様々の色をした魚が、同じ色同志に行列を作って、縞のようになったり、渦のようになったりしました。又は花の形を作ったり、鳥の形を作って見せた
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