工事報告を申上ます。
 昨昭和八年の十月、先生の銅像建設を思い立ちまして、初めは先生の菩提所である博多祇園町順正寺に建設するつもりでありましたが、都合に依り先生の有縁の地であるここに建設することになりました。ところが、彫刻家の方が非常に進んで、銅像はすでに出来る。当局の許可を受けねばならず。寄附金は仰がねばならんという不調法をふむ始末でありました。ところが各方面諸賢方の多大なる御助力に依りまして、ここに完成を見るに至りました事を厚く御礼申上ます。御通告申上ましたように、詳細は後日決算報告を御手元へ伝記と共に、差上る事になっておりますので、ここでは荒方工事の報告を致します。一、銅像一千一百円、玉垣外庭石代九十二円、庭造り四十八円九十銭、維持費積立金一百円、除幕式費用約百五十円、外に印刷費、通信費、及諸雑費でありますが、この工事の始終におきまして、先生御在世中の御素行に鑑《かんが》み、飲食費等の冗費としては半銭も支出致しておりません事をひそかに喜んでおります。甚だ簡単ではありますが、これを以て工事報告と致します。
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底本:「夢野久作全集11」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年12月3日第1刷発行
底本の親本:「梅津只圓翁伝」春秋社
  1935(昭和10)年3月10日
初出:「福岡日日新聞」
  1934(昭和9)年4月14日〜5月31日
※底本の解題によれば、初出時の署名は「杉山萠圓《すぎやまほうえん》」です。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2006年5月3日作成
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