った。大抵|素跣足《すはだし》で尻をからげていた。
毛虫と蛙はさほどでもなかったが、蛇を見付けると、
「おおおお。喰付くぞ喰付くぞ。打ち殺せ打ち殺せ」
と指をさして逃げまわった。
◇
翁の家の門は槙《まき》の生垣の間に在る、小さな土壁の屋形門であった。只圓翁の筆跡で書いた古い表札が一枚打って在った。敬神家の翁の仕業であろう、傍《かたわら》に大きい、小さい、色々の御守護札が貼り付けてあった。
或る日の事、その門の敷居を跨ぐと、翁が南天の根の草を※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]っていたので、
「先生。きょうは朔造(梅津)さんは病気で稽古を休みますと言伝《ことづて》がありました」
と云ったら、翁は「ウフウフ」と微苦笑して、
「今の若い者は弱いけに詰まらん」
と云った。その時の朔造氏は六十近かったと思う。
この話を帰ってから中風にかかっていた祖父灌園に話したら、泣き中風の祖父は叶わぬ口で、
「先生はイツモ御元気じゃのう。ありがたい事じゃ」
と云ってメソメソ泣き出した。
◇
翁はよく網打ちに行った。それも目堰《めせき
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