あつめてさむき松の声かな
船中月
心なきあま人さへもをのつから
あはれと見えん船のうへの月
夏草
秋になく虫の音きかんたよりにと
はらひのこしゝ庭の夏草
葵
神祭るけふのみあれのあふひ草
とる袖にこそ露はかけゝれ
夕春雨
椿ちる音もしすけき夕くれの
こけちの庭に春雨のふる
葵
加茂山にをふる二葉のあふひ草
とりかさしつゝ神まつるなり
夏草
はたちかふ牛のすかたも見えぬまで
しけりあひたる野への夏草
夕春雨
春雨のふるともわかで夕ぐれの
のきのしのふにつとふ玉水
庭菊
折とりてかさゝぬ袖もさく菊の
はなの香うつす庭の秋風
群雁
いくつらの落きてこゝにあそふらん
堅田のうちにむるゝかりかね
庭菊
くる人もなき菊そのゝ花さけば
はゝき手にとる庭の面かな
蚊遣火
蚊遣火はとまやのうちにたき捨て
しほのひかたにすむ海人の子
新年山
こそのはる花みし峰に年たちて
かすみもにほふよしのゝ山
群雁
治れる御代のしるしと大君の
みいけの雁の数もしられず
船中月
棹さしてうたふ声さへすみにけり
つきになるとの浦の舟人
更衣 (八十九歳時代)
人並にぬきかへぬれと老の身の
またはたさむき夏衣かな
夜蛙
せとちかき苗代小田にかけやとす
月のうへにもなく蛙かな
埋火
桜炭さしそへにけりをもふとち
はなのまとひに春こゝちして
池鴛鴦 (九十二歳時代)
山かけの池の水さえ浅かれと
ことしも来鳴をしの声かな
寒雁啼
露霜のふかき汀の蘆のはに
こゑもしをれて雁そ啼なる
春木 (九十三歳時代)
しはしこそ梅をくれけれ春来ても
いつかさくらと人にまたれつ
夏獣
重荷おひてゆきゝ隙なき牛車
なつのあつさに舌もこかれつ
友獣
をく山の青葉をつたふ木のは猿
つはさなき身も枝うつりして
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